宿泊業の外国人雇用マニュアル!外国人労働者の採用の流れや必要なビザを解説

昨今、外国人の雇用に乗り出すホテルや旅館が増えています。外国人労働者の力を借りたいと思いながらも、ビザの種類や採用までの流れがわからないということもあるかもしれませんね。宿泊業で外国人を雇用するための基礎知識や、労働に必要なビザ、求人募集の方法など情報をご紹介しますので、参考になさってくださいね。

目次

    宿泊業で外国人を雇用する背景

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    コンビニのレジや飲食店などで外国人労働者を見る機会が増えた、と実感している方も多いのではないでしょうか。

     

    実際に、外国人労働者数は右肩上がりで増加しており、全国の外国人労働者は2022年10月末の時点で約1,82万人と過去最高を記録。

     

    ベトナムなどのアジア圏を中心に、多くの外国人労働者が国内で活躍しています。宿泊業も例外ではありません。

     

    宿泊業で外国人を雇用する背景には、インバウンドの存在が大きく影響していると言われています。

    外国人の雇用に乗り出したホテルや旅館からは、外国人の雇用はインバウンドへの対応を目的としているという声が上がっています。

     

    インバウンドは団体での宿泊も多く、大勢の宿泊客に対応するためには、十分な人員が必要です。インバウンドの増加によって、人手不足に陥るホテルや旅館は少なくありません。

     

    外国人労働者の力を借りることで、安定的な運営が確保できるのです。

     

    また、外国人労働者と同様に、インバウンドの出身国は東南アジアであることが多く、外国人労働者の雇用は、文化や言語に対する課題への効果が期待できるとも考えられています。

     

    外国人労働者の雇用は、働き手としての役割だけでなく、インバウンドの受け入れ対策の一つでもあると言えるのです。

     

    新型コロナウィルスの影響で低迷したインバウンド需要も、2023年7月時点で1300万人まで回復しました。

     

    外国人労働者雇用を中止していたホテル・旅館の一部では、採用活動を再開する動きが見られます。

     

    政府は2030年までに、インバウンドの受け入れ目標数を6000万人に設定し、目標達成に向けて受け入れを強化する動きを取っています。さらに、外国人労働者については、2030年までに85000人を確保したいという考えも示しています。

     

    インバウンド増加に伴う人手不足の解消と、サービス向上のためにも、外国人の採用は急務と言えるかもしれません。

     

    参照:「外国人雇用状況」の届出状況 / 厚生労働省

     

    参照:外国人就労、拡大に方針転換 / 西日本新聞

    ホテルが外国人を雇用するメリット

     

    ホテルや旅館で外国人労働者の姿を目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。宿泊業は外国人労働者の就労先としての割合が高く、産業別の比率でみると全体の11.5%という結果になっています。宿泊業にとって、外国人労働者は欠かせない存在になりつつあると言えるかもしれません。宿泊業で外国人を雇用するメリットについて紹介します。

     

    人手不足の解消

    日本人従業員だけでは不足する労働力を、外国人労働者の雇用で補填できるのは大きなメリットです。

     

    人手不足はサービスの質を低下させる要因にもなってしまいます。サービスがいきわたる環境が整えられなければ、宿泊客離れが起こることもあります。

     

    ホテルや旅館にとって人材不足は、施設運営にかかわる深刻な問題なのです。

     

    外国人労働者の雇用は、単に人材確保するためだけでなく、サービスの向上にもつながっています。

     

    言語の壁の払拭

    日本に暮らす外国人の場合、日本語でコミュニケーションがはかれるだけでなく、母国語のほかに英語も堪能な人もいます。

     

    言語の壁が払拭されることで、インバウンドへのスムーズな対応が可能になり、文化や習慣の違いから来るトラブルも未然に防ぐことができます。

     

    より細やかな接客が行えるため、外国人宿泊客からの評価にもつながれば、集客への効果もあるでしょう。

     

    向上心の高い外国人労働者から得られる刺激

    外国人労働者は、自国で働く家族のために日本で働いているということも少なくありません。

     

    生活のための大切な労働であるとの意識が強い場合も多く、ハングリー精神のある外国人と一緒に働くことが、日本人従業員の仕事への意欲につながるということもあるでしょう。

     

    また、異なる常識や価値観に触れることで、日本人従業員の意識改革につながれば、多様性を取り入れた発想、発見がうまれることもあります。

     

    外国人労働者からの波及効果が、ホテル・旅館の発展につながる可能性もありそうです。

     

    参考:宿泊業における外国人材の雇用促進に関する業務/観光庁

     

    ホテルの外国人採用・雇用:必要な知識

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    ホテルで外国人を雇用したい!」と思っても、日本人の雇用契約の流れは適用できません。ホテルで外国人を雇用するために覚えておくべき知識をみていきましょう。

    ビザ(査証)と在留資格の違い

    まずは、混同しがちなビザと在留資格の違いから押さえておきましょう。厳密には下記のような違いがあります。

    ・ビザ(査証):入国・滞在可能かどうかの証明書

     海外の日本大使館・領事館から発給される日本入国の推薦書・上陸許可書のこと。

     短期滞在・長期滞在・医療滞在の3種類がある。

     有効期限の延長は原則不可能、また必ずしも入国を許可するものではない。

    ・在留資格:滞在内容に関する許可証

     出入国在留管理庁により発給される、外国人が日本への在留に必要な許可のこと。

     日本の空港・港などでビザに見合った在留資格が付与されることで、入国が許可される。

     法的な効力を持ち、慣用的に「就労ビザ」と呼ばれることが多い。

    ホテルで外国人を雇用する際によく話される「ビザが必要」という言葉は、一般的に「在留資格(長期滞在の就労ビザ)」を指すケースが多いようです。

     

    外国人の採用~雇用までの流れ

    外国人を雇用する際は、応募者が必要な就労ビザ(在留資格)を所持しているかの確認は不可欠です。これは、海外に居住し必要なビザを取得していない、在留中だが必要なビザを取得していない、在留していて必要なビザも取得済、という場合で手続きが大きく異なるためです。

     

    今回は、中でも数が多い「在留中だが必要なビザを取得していない」という外国人を雇用するまでの流れをご紹介します。

    • 【在留中/ビザ未取得の外国人雇用】

     

    • ・求人の募集
    • ・書類選考時の必要ビザ取得見込みの調査
    • ・面接
    • ・内定
    • ・雇用契約書の作成
    • ・出入国在留管理庁へ「在留資格変更許可申請」
    • ・必要ビザの給付
    • ・雇用の開始

    最も気を付けたいのは、必要となる就労ビザの取得見込み。内定を出したとしても、必要なビザを所持していなければ雇用はできませんので注意してくださいね。

     

    また、就労ビザは発給に時間がかかります。「在留資格認定証明書」を提示し、申請内容に問題がなければ申請受理の翌日から5業務日で発給されますが、「在留資格認定証明書」を提示しない場合は、1カ月~3カ月程度の時間がかかることも押さえておくべきです。

     

    ビザがなければ法律違反に!

    ビザ(査証)の期限が切れた状態で滞在を続ける外国人は、俗に言う「不法滞在」になります。また、必要な在留資格を取得していない場合や、不適切なビザのまま仕事に従事させた場合には、雇用主が「不法就労」をさせていることになってしまいます。

     

    勤務できる年数や勤務時間に限りがある在留資格もあるため、知識がないまま外国人を雇用してしまうと、ホテルが不法就労・不法滞在で摘発されるリスクも。知らぬ間に法を犯さないよう、知識をつけ採用に臨みましょう。

     

    ホテルの外国人採用・雇用:ビザの種類

    外国人を雇用するためには職務に関連したビザが必要であり、専門職や軽作業などの業務内容によって必要なビザは異なります。

     

    現在、就労・長期滞在に必要なビザは、下記の7つに分類されます。

    • ・高度専門職ビザ
    • ・就業ビザ
    • ・一般ビザ
    • ・特定ビザ
    • ・起業(スタートアップ)ビザ
    • ・外交ビザ
    • ・公用ビザ

    この7分類に分けられるビザは全部で30種類もありますので、雇用の際は自施設に必要なビザの知識だけでも身に付けるべきでしょう。次項では、ホテル業の外国人雇用に必要なビザの種類をご紹介します。

     

    参照:就労や長期滞在を目的としたビザ / 外務省

     

    ホテルの外国人採用・雇用:ホテルに馴染みの深いビザは?

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    ホテルが外国人を雇用するために必要となる代表的な就労ビザは、5種類あります。それぞれのビザの特徴をみていきましょう。

     

    就業ビザ「特定技能(1号)」

    2019年4月に新設された学歴・実務経験不要のビザで、人手不足が深刻な介護業・外食業・宿泊業など14業種に適用できます。

     

    日本語能力試験でN4以上または日本語基礎テストを取得しており、各分野の特定技能試験に合格できれば発給されます。特定技能1号のビザがあれば、今までできなかった単純労働も任せることができるようになります。

     

    注意点は、在留期間の長さです。在留期限の制限がない特定技能2号に対し、特定技能1号の在留期間は最長5年、更新は不可という制限があるので、長期雇用はできません。

     

    就業ビザ「技術・人文知識・国際業務」

    外国人の正社員雇用で最も多く取得されているビザです。マルチタスクでの就労は法令違反となりますので雇い入れには注意しましょう。(他分野ですが、書類送検された事例も出ています。)

    ホワイトカラーや事務などの専門職を対象としており、大学卒業程度の教育を受けた・日本の専門学校卒業程度などの学歴や、3~10年の実務経験が必要とされる場合もあります。

     

    一般ビザ「留学」(資格外活動)

    留学生は、「留学」ビザの取得が不可欠ですが、留学ビザは就学を目的に発給されるビザですので、留学生がアルバイトを行う際は「資格外活動」という別の許可が必要になります。

     

    「資格外活動」では、主たる活動(勉学)に影響を受けない範囲での就労が義務付けられており、1週間の就労時間は28時間以内までと定められています。ただし、春休みや冬休みなどの長期休業期間中は、1日8時間までの勤務が認められています。

     

    一般ビザ「家族滞在」(資格外活動)

    家族の転勤などによって配偶者や子どもが日本国内で生活する場合は、「家族滞在」のビザの取得が認められます。

     

    「留学」同様、就労が目的のビザではないため、配偶者や子どもが就労する際は「資格外活動」の許可が必要です。留学ビザの資格外活動と同様の就労規定があります。

     

    特定ビザ「永住者」「日本人の配偶者等」等

    就労・長期滞在の際に必要となるビザの中には、身分系ビザ・身分関係ビザと呼称される特定ビザがあります。具体的には、永住権を持った「永住者」や、日本人と結婚した「日本人の配偶者」などが特定ビザに定められています。

     

    「永住者の配偶者等」「定住者」を加えた計4つの特定ビザに関しては、法的にも日本との結び付きが強いと判断されているため、就労の制限はありません。

     

    ホテルの外国人採用・雇用:職種別に見る必要ビザ

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    ホテルには、フロントやハウスキーピングなどさまざまな職種がありますが、職種ごとに必要となるビザは異なります。ホテルの職種ごとに必要となるビザを確認していきましょう。

     

    フロント業務

    就労ビザ「宿泊分野特定技能(1号)」を取得していれば就労できます。接客を中心としたマルチタスクでの就労が可能です。就業ビザ「技術・人文知識・国際業務」もありますが、この就労ビザで担当できる業務は通訳のみですので、フロント業務全般のマルチタスクでの勤務はできません。

     

    ハウスキーピング業務(清掃・ベッドメイキング等)

    就業ビザ「ビルメンテナンス分野特定技能(1号)」を取得していれば就労が可能です。

     

    レストランでの調理補助・皿洗い・配膳業務

    ハウスキーピング同様、単純労働という観点から、就業ビザ「外食業または飲食料品正製造業特定技能(1号)」を取得していれば就労が可能です。

     

    レストランでの調理業務

    就労ビザ「外食業または飲食料品製造業特定技能(1号)」を取得していれば就労が可能です。また、「特定技能」ではなく「技能」という就業ビザの取得が必要です。特定の分野で熟練した技能を必要とする業務に対して与えられる在留資格で、自国での10年以上の実務経験が必要となります。

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    ★注意ポイント
    フロント業務・ハウスキーピング・調理はいずれも特定技能1号で認められている分野ですが、それぞれの分野別技能試験で在留資格を取得している必要があります。業務別の技能試験は以下の通りなので、必要な就業ビザがあるかどうかを確認しましょう。

    ・「フロントサービス業務」→宿泊分野特定技能
    ・「ハウスキーピング」→ビルメンテナンス分野特定技能
    ・「調理」→外食、惣菜特定技能

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    バックオフィス業務

    就業ビザ「技術・人文知識・国際業務」の取得が必要です。このビザがあれば営業・経理・総務・経営企画などに従事してもらうことができますが、多くの場合、大学や専門学校での選考科目との関連性が重要視される傾向があります。

     

    留学生アルバイトの場合

    留学生アルバイトは、高度な専門性が必要となる職種を除き、多くの職種で就労が可能です。ただし、前項で紹介した通り「資格外活動」の許可取得が必要であり、1週間に28時間以内の就労でなければならないことを覚えておきましょう。

     

    この他の在留資格の許可・不許可の具体例は、下記よりご確認ください。

     

    参照:ホテル・旅館等での外国人在留資格の明確化 / 法務省

     

    ホテルの外国人採用・雇用:求人募集の方法

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    「外国人を雇用したい!」と思っても、適切な求人ができなければ雇用はできませんよね。外国人雇用におすすめの求人募集方法を5つご紹介します。

     

    外国人専門の求人サイトでの募集

    まずは、在日外国人に特化した就職情報サイト・求人サイトの利用を検討しましょう。日本語で登録ができる、外国人雇用に特化しているサイトは10以上あるので、他競合での活用実績、自施設への適合性を判断し、利用してみるのはいかがでしょうか。

     

    宿泊団体専用求人サイト

    宿泊団体(日本ホテル協会、全日本ホテル連盟、日本旅館協会、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会)に加盟している宿泊施設であれば、各団体が用意している求人サイトに無料で掲載できます。

     

    専門学校・大学・大学院からの紹介

    新卒採用や留学生の雇用を検討している場合は、専門学校・大学・大学院から紹介をしてもらうのが効率的かもしれません。特に外国人の受け入れを強化しているような学校では、就労支援にも力を入れている場合が少なくありません。条件に合った人材を紹介してもらえる可能性もあります。

     

    相談先は、学校内にある就職課・キャリアセンターになることが多いようです。

     

    人材紹介会社に相談する

    人材紹介会社に登録している求職者の中には、外国人もいます。

     

    日本語能力が高かったり、他社で就労したことがあったりする人が登録している場合もあるため、能力の高い人材を採用したい場合は、相談してみても良いかもしれません。

     

    SNS・コミュニティサイトでの募集

    求人サイトの代替やヘッドハンティングとして、SNSを活用するのもおすすめです。外国語での対応が必要となりますので、社内の人材に翻訳を依頼したり、すでに外国人を雇用している場合は、業務を任せたりするのも良いでしょう。

     

    外国人採用・雇用でホテルの人手不足を解消しよう

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    外国人の雇用・採用活動については、ハードルの高さを感じるホテルは少なくありません。しかし、必要なビザの種類や必要書類の提出手順を覚えてしまえば、難しくないという意見が目立ちます。

     

    ホテル・旅館などの宿泊業はこれからますます人材が必要になる業界。ぜひ前向きに外国人の雇用を検討してみてくださいね。

     

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